A 試用期間は、一般的には解雇権が留保された労働契約とされますので、企業には正式採用後よりも解雇権の行使について、裁量が広く認められます。広く認められると言っても、労働基準法の第18条の2は適用されますので、きちんした理由がない解雇は認められない可能性があり、解雇権の濫用として無効になる場合があります。「能力がないので解雇する」というのであれば、企業は、具体的にどう能力がないのかを明らかにしなければなりません。具体的に明らかにできないのであれば不当解雇になる可能性が高くなります。
A 企業としては、この社員が言っている「軽易な業務なら行なえる」という健康状態の裏付けを取るために、医師の診断書の提出を求める必要があります。(診断書の提出については就業規則に明記すべきです)医師の診断も軽易な業務であれば復職可能ということであれば、復職の手続きをとるべきでしょう。職種が限定されている労働契約であったり、中小のため「経営に余裕がない。完全復職でなければ復職は難しい」という企業もあると思います。このような場合は、事案ごとに判断していく必要がありますが、原則的には、この社員を軽易な業務から復職させて、完全復帰が可能かどうかを復帰プログラムに沿って業務を行なわせた上で判断するという方法がいいでしょう。
A 企業は、社員が有給休暇を取りたい日を指定してきた場合、その日を変更する権利はありますが、拒否する権利はありません。変更する権利についても「事業の正常な運営に支障がある場合」に限られます。「忙しい時季」だからという抽象的な理由では不十分であり、代替要員の確保等の努力をし、社員が有給休暇の取得できるよう十分配慮したが、それでも社員に有給休暇を取得されると業務に支障が出る場合に初めて企業の時期変更権の行使が認められると考えられます。
A 勤務成績不良により社員を解雇する企業は多いと思いますが、単に勤務成績不良では抽象的過ぎ、労働基準法第18条の2により解雇権の濫用とみなされ解雇自体が無効になる可能性があります。解雇は社員との労働契約を一方的に解除するわけですから、具体的にどう勤務成績が悪かったのかを示さなければなりません。また、企業が社員に対して勤務成績を向上させるための教育、注意、指導を行なったかどうかも重要な事項になります。
つまり、社員に具体的な勤務成績の悪さとそれによって企業が受ける損害を示し、教育、注意、指導を行なってもなお勤務成績に改善が見られない状況であれば解雇は認められる可能性が高くなると考えてください。ご質問の内容からすると、勤務成績の悪い業務内容も「基本的な業務」とある程度具体的ですし、注意指導も行ったということですから、解雇は有効である可能性が高いと思われます。
A 休職している社員が、就労できるかどうかを判断するために、企業が医師の診断書の提出を求めるのは合理性のあるもので措置としては相当性があります。また、社員は企業の要請に応え、医師の診断を受け、診断書を提出する義務があります。もし、社員がこれに応じない場合は、復職させず労働契約を解除することもやむを得ないと考えれます。
A 経歴詐称については、その詐称事実が「重大な経歴詐称」にあたれば、懲戒解雇は有効になる可能性が高くなります。「重大な経歴詐称」とは、現実に企業秩序の侵害が発生している場合であり、本当の経歴では入社できなかったにもかかわらず、経歴詐称したことで入社できたとすると、そのこと自体が企業秩序の侵害行為に当たることになります。ご質問でケースが、大学中退者であれば入社できなかったとすれば、懲戒解雇も有効ということになります。
A 会社の商品を勝手に持ち出すのは、横領や窃盗にあたりますからいわゆる非違行為です。また、上司の命令に従わず書類の提出を行わないのは、業務命令違反になります。このような不正行為に対しては、企業の秩序を維持するため解雇も含め厳しい対応を取る必要があります。しかし、懲戒解雇はもちろん普通解雇であっても、解雇は究極の処分ですから具体的に不正の程度、企業が受けた損害の程度、業務命令違反の内容を慎重に精査した上で処分内容を決定すべきでしょう。
A 会社員であれば、勤務地限定の労働契約でないかぎり、転勤を伴う配置転換があると考えるのが一般的です。社員の雇用を保障している代わりに企業には社員の適正配置という人事権が広く裁量として認められています。広く裁量として認められているといっても、その法的根拠は明確にしておく必要がありますから、まず、就業規則に転勤を命じることがあり、社員はこれに応じる義務があることを謳っておきます。こうしておけば就業規則を根拠に社員に人事権を行使することができます。ご質問の内容からすると就業規則に転勤に関する条文は存在すると考えられますから、あとは、配置転換の中味の問題です。企業の人事権の行使が濫用にあたるかどうかの判断基準は、
A 結論から申し上げると、転勤命令に従う必要はありません。東京営業所での限定勤務という労働契約を結んでいる訳ですから、企業側は、社員の同意なく転勤を一方的に命じる権利そのものがないことになります。入社時の労働契約締結の経緯を企業とよく話し合いその際の合意がどのようなものであったかをよく確認してください。
A 就業規則に出向に関する規定があれば、原則的に社員は出向命令を拒否することはできず、企業は該当する社員から同意を得る必要もありません。出向に関しては、業務上の必要性は認められ易いと言えるので、これに関してはそれほど配慮する必要はありません。
ただ社員への説明不足から誤解が生じ、労務労働トラブルへ発展することもありますので事前説明はしっかり行った方がいいでしょう。
A 残業を全く行わないということは、状況によっては業務命令違反になる可能性があるものであり、企業に対する貢献度も低くなると考えられますから、昇給、昇格を遅らせるという査定は至極当然であり、合理性もあると言っていいと思います。ただ、査定基準をしっかり定めた上で人事考課を行い、第3者が見ても「不当な評価ではないな」と思われるようにしておかないと、不当な差別だとして社員から抗議を受け、損害賠償請求されることもあり得るので注意が必要です。
A 降格に伴い、賃金の引き下げを行うとすれば、賃金規程等にその根拠規程が存在しなければなりません。企業には広く裁量権が認められていますが、賃金は社員にとって最も重要な労働条件ですから、降格された場合には賃金が引き下げられることがあるということを、社員が理解している必要があります。規程に明確に定めることは当然として、入社時の労働条件説明の際にも降格、降給することがあるということを入社する社員に伝えることは非常に重要です。
ご質問のケースは、勤務成績も悪くないということですし、人事担当者がすぐに根拠規定を見せないなど不誠実な対応を取っています。また賃金の引き下げ額も10万円ということですから、事実関係から見れば人事権の濫用となる可能性は十分あると思います。
A 昇給に関しては、就業規則に必ず記載しなければなりませんが、必ず昇給させることを前提にしている訳ではありません。ご質問の就業規則の規定の仕方は【昇給を行うことがある】となっていますから、昇給実態が、どんなに成績の悪い社員でも毎年一定額の昇給が行われているなどの運用がされていない限り、誰を昇給させ、誰を昇給させないかは企業の裁量により決定することができます。
A 年俸制の場合は、割増賃金を支払わなくてもいいと思っている企業がありますが、これは間違いです。年俸制を取ったからといって割増賃金の支払義務が当然に免除されるわけではありません。企業は社員に対して、年俸額の中の割増賃金額を事前に示した上で合意を得る必要があります。毎月の給与明細書の記載の仕方も通常報酬額と割増賃金額を分けて表記するべきです。ご質問のケースは、内容から判断すると割増賃金の請求は可能であると思われます。
A 労働基準法第41条の2では、労働時間、休憩及び休日に関する規定を、事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者または機密の事務を取り扱う者には適用しない。と定めています。【この監督若しくは管理の地位にある者とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず実態に即して判断すべき者である】という行政通達も出されています。この基準から判断すると、一般的に係長は労働時間の適用除外者には該当しないと考えられますから、割増賃金を支払わなくてはならないと思われます。
A 賞与の支給日在籍要件については、支給日に在籍していない社員には賞与を支給しないという規定が就業規則に記載されていれば、それが賞与の支給条件とみなされ、企業が賞与を支給しなくても労働基準法違反にはならないとされています。最高裁判所でも支給日在籍要件は合理性があるとされています。しかし、ご質問のケースのように7月に支給すると明確に定められている場合は、労働契約として企業は7月に賞与を支給する義務を負っていますので、8月に賞与が遅延したとしても7月の退職者には賞与を支払わなければならないと考えられます。
A 労働契約として明確に支給額および支給時期が決められている以上、企業経営に余程の予想できない不測の事態でも起こり、社員の同意を得ない限り、賞与を支給しないということは認められません。ご質問のケースは、支給時期が夏期、冬期ということで支給月が明確ではありませんが、前述の不測の事態が起こらない限り、遅延することすら難しいと思われます。
A 退職金規程は存在していないということですので、労使慣行として退職金支払の事実が法的効力を持つかどうかということになります。内容からするとこれまで、多くの退職者に社長判断で退職金を支払ってきたようですので、その支給条件が明確であれば労使慣行として企業の退職金支払義務が肯定される可能性はあります。最近の裁判例では、労使慣行が法的効力を持つには、該当する労働条件(今回の場合、退職金)について決定権ないし裁量権を有する者が規範意識を持ってこれに従っていたことが必要であるとしており、ご質問のケースでは社長がこれに当たりますので、企業としては該当社員の勤務成績を精査し、慎重に支払について検討しなければならないと思います。
A 退職金規程に【業務引継ぎを行わなかった者に退職金を支給しない】という条文が存在しないということですから、仮に社員が業務引継ぎを行っていなかったとしても、企業は退職金を支払わなければなりません。仮に不支給条文が存在していても、退職金は賃金の後払的性格と功労報償的性格を併せ持つものと考えられますので、その事由に合理性がなければ無効になる可能性があります。つまり社員の行為の企業に対する背信性が高いと認められる場合に初めて不支給が認められると思われます。